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BMWといえば「バイエルン発動機製造株式会社」の名に恥じない胸のすくような加速を実現するエンジンと、高い剛性を持つボディと足回りから来るハンドリングが魅力。
しかしそんなBMWの駆けぬける歓びを「もっとダイレクトに」「そして華やかに」楽しむことができるモデルが存在します。
それがBMW Zシリーズ。
今回はそんなZシリーズの歴史を紐解き、皆さまにオープンエアの魅力をご紹介してまいります。
歴代Zシリーズ
Z1 Zシリーズの始まりは「ドアのない車⁈」
Z1を初めて見た方がまず驚くのは、「ドアがないまま(正確にはドアを開けたまま)走行することができる」というその構造です。
Z1のドアはパワーウインドウの窓ガラスのようにサイドシル(ドアの下に位置する敷居)部分に吸い込まれて収納されるようになっています。
カウンタックを祖先とするランボルギーニ社の歴代トップモデルなどが採用する「ガルウィング・ドア」の様に上にドアが跳ね上がる構造のクルマは他にもありますが、Z1の様にドアが「下」に降りて収納されてしまうのは他に類を見ないユニークさです。
ちなみに、オーブンカーでドアもないまま走行できるということで、「クルマの剛性は大丈夫なの?」と思われるかもしれません。
しかし実はこのドアの構造は、「オープンボディでも強固な剛性ボディを実現させる!」というBMWテヒニーク社のこだわりのたまもの。
Z1を開発するにあたり、鋼板溶接によるバスタブ形状のモノコックでボディを作ったのですが、剛性を高めるあまり、サイドシル部分が「高く」「幅広く」なってしまったのです。
そのため通常のドア構造にすると乗り降りするには四苦八苦しなければなりません。
そこで苦肉の策として、サイドシル部分に収納されるドアを開発し、「ドアなし」で乗れるようにしたというわけです。
このZ1、ドアの構造以外にもボディパネルはFRPをはめ込むなどといったこだわり抜いた設計にしたため、製造工程はそのほとんどが「手作業」!
そのため1日数台しか生産できず、総生産台数は8,000台。中古車市場で高価なプレミアが付くという現象まで起きたのです。
Z3 走りを楽しむ「ライトウェイトオープン」
未来的なデザインだったZ1とは異なり、Z3は布製の幌を持つ伝統的なオープンカーです。
コードネームとしては「E36/7(クーペモデルはE36/8)」と「E36」世代になっていますが、実際のベースは一世代前のE30を元に開発されています。
当初はオープンボディのみの設定でしたが、後にハードトップを持つクーペモデルも追加。
更にはM3と同じエンジンを搭載した「Mロードスター」「Mクーペ」も登場し、走りをとことん楽しむライトウェイトオープンスポーツとして、大人気を博したのです。
Z4 ロングノーズ・ショートデッキの「アッパーオープン」
Z4は2002年、Z3の後継車として発表されますが、Z3よりもボディサイズが大きくなり、当初は全モデルが直6エンジン搭載(後に直4のモデルも追加)と、Z3よりも上位指向のモデルとなりました。
初代(2003~2008)
7シリーズなども手がけたアメリカ人デザイナー「クリス・バングル」によるデザインは、小粋なオープンモデルというよりも、ラグジュアリーなアッパーオープンに。
当初はソフトトップのオープンモデル、そしてクーペモデルが加わり、更にMモデル(Z4 Mロードスター、Z4 Mクーペ)が追加されるという流れはZ3と同じです。
2代目(2009~2016)
2代目の特徴は、オープンボディとクーペボディの良いとこ取りをした「クーペカブリオレ」ボディとなったこと。
これはハードトップを電動で折りたたんで後部トランクに収納する「リトラクタブル式ルーフ」を採用したもので、わずか20秒で
オープンボディからクーペボディに変身。安全性、耐候性、遮音性が格段に向上しました
3代目(2019~)
エンジンとシャシーをトヨタのスープラに提供する3代目Z4は、「走りを極める」という原点に回帰したモデルです。
元々ショートホイールベースだった2代目Z4のホイールベース(2,496mm)を更に26mm詰めて2470mmとし、ハンドリング性能を向上。
更に重量物であったリトラクタブル式ルーフをやめてソフトトップとし(約40kgの軽量化)、重心を下げて運動性能を追求しました。
これらにより、グランツーリスモ的な性格であった2代目Z4とは異なり、BMWきってのピュア(オープン)スポーツとなったのです。
Z8 ボンドカーにも採用された「スーパーロードスター」
オールアルミニウム製のボディ・シャーシにM5(E39)と同一の4.9L・V8を搭載したZ8は「無敵のスーパーロードスター」!
7シリーズを上回る「8」のネーミングが示すとおり、アルミの軽量ボディに最強のエンジンを載せているのですから、その性能は言わずもがなです。
それでいて外見は名車BMW507をモチーフとしただけあって、クラシカルでジェントル。
まさに「羊の皮を被った狼」で、「007ゴールデン・アイ」でボンドカーに採用されたのも当然といえるでしょう。
Zシリーズは最もピュアなBMW
後席のない2シーター、全長に比べ短く採られたホイールベース、比較的軽量なボディ。
Zシリーズはその全てを「走ること」に向けて研ぎ澄ましています。
どのモデルであっても駆けぬける歓びを感じられるBMWですが、Zシリーズは中でも最もピュアに、そしてダイレクトに「スポーツ」を体感できるモデルです。
ぜひZシリーズに乗り、触れることで、「BMW」を感じてみてください。